鮮烈なデビューからわずか2年足らずで、34歳の生涯を閉じた夭折のSF作家・伊藤計劃。
彼の長編三部作をアニメ映画化する壮大な企画が、
フジテレビの深夜アニメ枠ノイタミナが手掛ける『Project Itoh』です。
その2作目にあたり、第40回星雲賞(日本長編部門)および
第30回日本SF大賞受賞を受賞した『ハーモニー』は、
ほとんどSFを読まない自分にとって、実に衝撃的な作品でした。
慌ててデビュー作である『虐殺器官』や、
第1章のみが残っていた遺作を盟友・円城塔が書き上げた『屍者の帝国』にも手を出したのだけど、
個人的には近未来のゾッとするこわさを描いたハーモニーが一番好きです。
そんな大好きな作品のムビチケが1枚余ってしまいました。
なぜかというと、友人がアニ限の前売りを買ってくれたんですよね。。
アニ限とはアニメ・コミック・ゲーム関連商品を扱う、
日本最大手の販売チェーン・アニメイトで限定販売される諸々のことを指します。
こんな余計な注釈をつけるくらいなら、略さずに記せって自分でも思いますが、
オタクは解説したがりなのでご了承ください。
しかもきちんと調べないで打っちゃったんで、悔しいから消さないけど、
正確にはアニ限ではなく、もともとはコミケで売られてた特典付き前売り券でした。。
普段、グッズには心を動かされない自分ですが、
今回は『PSYCHO-PASS サイコパス』とコラボしたクリアファイルという、
粋過ぎる特典だったんだもの・・・
PSYCHO-PASSは踊る大捜査線の本広克行が総監督を務めた、
最近のノイタミナ作品では屈指の人気作なんですが、
その1期目のラスボスであるところの槙島聖護氏(もはや名前の字面が酷い)が、
それぞれの作品を読んでいるイラストのファイルなんですよ。
こういうコラボは素晴らしいよ、ノイタミナ!
もっとやれ!!!
何が素晴らしいかというと、
槙島はかなりのインテリというか
劇中でもいちいち世の名作の台詞を散らした言葉を吐く、
ちょっとアレな人なんだけれども、
彼の愛読書のひとつが『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』なんですよね。
で、この小説はSFの一つの金字塔で
作者であるディックは、
常に人は何をもって人たるのか
みたいなことを問い続けていたようです。
なんで伝聞っぽくなるかといえば、
わたしがアンドロイド〜以外ディックの本を読んでいないからだけども、
この本だけでも、1968年に書かれたとは思えないほど、
普遍的で色褪せないテーマを扱った傑作です。
伊藤計劃もまさにそういったSFの王道的なテーマを扱っていて、
槙島が読んでることにまったく違和感がないんです。
こういうの良い。
ほんと良い。
で、Project Itohに気持ちが昂ってすでに買っていたムビチケとあわせて、
2枚の前売りがわたしの手元に揃いました。
そんな興奮してんなら2回観ろって思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
すっげーオタクっぽくても、めっちゃハマってそうでも、
ぜったいそういうことをしないところが、わたしが追っかけになれない所以です・・・
ついでに今日、屍者の帝国を観た感想も、
気持ちが高まってるついでに記そうとおもいます。
期待値が跳ね上がっていたこの映画は、
それ、SFじゃなない、ファンタジーだ!!!
というツッコミを終始入れ続ける仕上がりでした。
そして、なんかすごく、ギルティクラウンぽかったです。
ギルティクラウンはノイタミナのオリジナルアニメで、
監督は後に進撃の巨人のアニメを手掛けることになる荒木哲郎、
制作は攻殻機動隊等が有名なプロダクションI.G、
その他作画も音楽もひたすらにすばらしかったんだけど、
ただひとつ、
内容が中二病過ぎてわたしに見続けることを拒ませた作品です。
中二病を完全に卒業した大人か、
真っ盛りの若人なら楽しめたんだろうけど、
中二病をこじらせたままの成人にはいささかキツかった。。
話を戻すと、
実のところ、円城塔の頭が良すぎて、
原作は第1章以降内容がよくわからなくなり、
途中で挫折してるんですけども、
それでも、ぜったい映画とは違う話だろうって思います。
ただ、不思議と酷いと思わないのは、
Project Itohが決して原作を軽んじてるとは思わないからなんです。
600円から800円が相場のパンフ市場において
だいぶオタクの足元を見て来た1,200円のパンフを読んでいたら、
円城塔がほんとに良いこと言ってました。
伊藤計劃ならどう考えるかではなくて、
伊藤計劃が書いたものを通じて得たものから
自分ならどう考えることが出来るのかが問題だ
と自問しながら屍者の帝国を生み出した彼は、
書籍が他の形態に姿を変え、
絶えず変貌していく過程が
物語の一生には必要だと語っています。
そして、その一生には、
「一つの作品が多くの人々の手に渡り、
姿を変えていく間だけには留まらない、
それを読み、観て、聞いた人々の
考え方や感じ方を変え、
その人の中に溶け込んでいく。」
とも。
浅はかな市場主義の先に
出来上がったメディアミックスには思えないから、
作り手が原作が自らに溶け込んだ先にあるものを
懸命に作り出したんだと信じられるから、
自分の趣味にはがっつりハマらなくても、
映像化のひとつのかたちであると思えました。
じゃあ、そう思えない実写化はなんだと言われたら、
あえてはっきり言いませんけど、
巨大なアレを駆逐しようとする作品とかね。。。
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